アクロとスクルとしーちゃんが綴る、波乱万丈毎日がドタバタなMapleStoryの物語。


by mar_cancion

黒い男と青い少年

 「…おーい…大丈夫か?」

 浪人風の男は、そういいながら少女の肩を揺さぶり意識を確認する。力が入っていないため頭がぐらんぐらんと大きくゆれる。
 「…ぅぅ…ん…?」
やっとのことで意識が戻ってきたのか、寝言のような声を発する少女、その次の瞬間にはうっすらと目を開けた。
 「…あ…あれ…?うち…?」
まだ先程まで何が起こっていたのかを思い出せていないようで、目をこすりながら辺りをキョロキョロと見渡す。
 「スクルは無事か…さて、問題はこっちだな…」
そう男が手を離し違うほうを見やった。
 「おかげさまで……っ!?」

 名乗ってもいないはずなのに名前を言い当てられて目を見開く、驚きを隠せないようすの少女…そう、落ちてきたのはゾンビに追い掛けられ、橋で足を踏み外し転落したスクルであった。
 「な…なんでウチの名前…っ!?」
 「え?俺が誰だかわかんねぇ?すくるちゃん♪」
 男が振り返るとスクルは誰だか確認するためじぃ…っと見つめる。そしてその男が誰かを理解したのか、男を指差し、驚いたようにまた口をぱくつかせた



 「ゆっ…ゆ…ユエ…っ!?」

 “おおあたりー♪”と軽く答え、再びある方向を向く、スクルはというと手で頭を押さえている。

 「いやぁ~久しぶり、すっかり真っ黒だね☆」
 「確かに…確かに『この際ユエでもいいや』とは言ったけど…ホントにユエが来るなんて…!」

 ユエの言葉は届かなかったのか、スクルは頭をかかえ、ブツブツと独り言をいい現実逃避を試みるがあっけなく引き戻されるのだった。

「あ~…そのいい方はひどいなぁ…俺はこんなにも愛しているというのに…っ!」

 めいいっぱい感情を込めていうユエに対し、スクルはというとユエをじろっと睨み“はい、そこいい加減なこと言わない”と、慣れたように冷めたような言い方でさらっとあしらう。
 ユエも慣れているのか、表情一つかえず、相変わらずひどいなぁとつぶやく、顔は依然にこやかなまま。

 「それよりお嬢さん、こちらに治癒魔法頼めませんか?なかなか起きてくれないのですよ…」

 今までの話を何もなかったように話す、それをみてさらに不満そうな顔でにらみつつ、ユエのみる方を見ると、確かに一人の少年が倒れていた。

 「ほえ?だれこの子―……”ヒール”!
 「…我々を守るために衝撃吸収剤となってしまった哀れな子羊です。」
 眼を閉じて手を合わせ”ご愁傷さまでした”とさらっと酷なことを言うユエを端で睨みつつも、そこに倒れている少年をとりあえずいわれるままにヒールをかける。
 すると青白い顔に赤みが差して…しばらくして少年はうっすらと目をあけた。

 「やっとおきたか…こっちもひとまず大丈夫…っと」

 やれやれといった感じのユエ、感謝の意を込めてなのか、ただ反応を楽しみたいだけなのか、スクルの頭をぽんぽんと押さえる。
 だが当の本人はむぅ…と言いながら目を細め、眉間に皺をよせていた。

 「…お…俺は……?」

 倒れていた少年はゆっくりと体を起こし、状況がいまいち飲み込めていないのか、目をごしごしとこすりぼーっと辺りを見やる。心なしか様子がおかしくみえる。
 そんな少年にユエは「おいおい…まさか“記憶喪失”って言うんじゃねーだろうなぁ?」と、ユエはスクルのときとは大分違った対応をとる。

 「まさか、さすがにそんな漫画みたいな展開は無いよ、ちゃんと名前だって思い出せる……し?あ…あれ?」

 頭をぽりぽりとかいていた手がぴたりと止まる。
 少し嫌な予感を漂よわせ一体どうしたんだとユエがきくと、少年は難しい顔をしたあと、困ったように尋ねた。



 「…俺の名前…なんだったっけ?」



 それを聞いたユエは、マジかよ…とつぶやき軽く頭を抑えた。

 「…とりあえず、呼びにくいしてきとーに呼び名をつけるか…」

 そういって再びう~んっと悩みはじめる。しばらくたって、一つの候補をあげた。

 「もう簡単に"ちび"でいいか?」

 それを聞いた少年はむっとした顔で"俺はチビじゃねぇ!"と大声で訴える。
 急に大声を出されたせいか、スクルは目をまるめて何かきょどきょどしていた。
 ユエというと仕方ないな…と、もう一つ候補をあげる

 「じゃぁ…もう簡単だけど"あおぼー"なんてどうだ?青い帽子かぶってるからあおぼー」

 それを聞いて、まだそれなら…としぶしぶ承諾する少年ことあおぼー。

 「じゃぁ、改めてよろしくな、俺の名前はユエでこっちは…って、スクル?どうしたんだよ?」

 名前を紹介したあと、ついでにスクルの名前も言っておこうとスクルの方をむいたが、当の本人はしきりに辺りを見回し妙にそわそわして落ち着かない様子。大声でびっくりしたにしては様子が変だった。
 ようやく少し落ち着いたのか、二人に聞いてみる

 「なぁ、なんか変な音きこえん…?」

 え?なにが?と言った感じの様子で顔を見合わせるユエとあおぼー

 「何も聞こえないよ?スクル…ねーちゃんの聞き間違いじゃない?」
 そうあおぼーが、スクルの名前を呼ぶことに照れつつも切り出す。

 しかし、さっきまであおぼーと同意見だったはずのユエまでもが刹那、真剣な顔をして固まる。

 「おいおい…なんかスクルの予感、的中みたいだぜ?」
 辺りを見渡し、その音の正体がわかったのかフッ笑みをこぼす…

 まさかと思い、あおぼ-が辺りを見渡す…"何もいないじゃん"と言おうとした矢先、視界の隅に動く影を見つけ、あわてて雪に足を取られ地にひざまづく格好になる


 「おいおい、しっかりしろよ?油断したらヘクタさん方の晩餐になることになるぜ?」

 ユエはまるでこの状況を楽しむかのようににやりと笑い、ゆっくりと背中の荷物に手を伸ばすのだった。
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by mar_cancion | 2006-08-31 12:38 | スクルファー