アクロとスクルとしーちゃんが綴る、波乱万丈毎日がドタバタなMapleStoryの物語。


by mar_cancion

戦前 ―静寂と闇―

 日も暮れ、煌めく数々の星も、大きな月さえも見当たらない少し恐怖を感じるような暗闇、その闇をどこをみるわけでもなくただ眺めている少女…その少女の瞳に何かが写る。

 「ライア…皆様の様子はどうでしたの?」

 そういいながら、今滑空して、窓の縁に逆さまにぶらさがったばかりの一匹のコウモリのような生きものに語りかける少女…赤い大きなリボンによって結われた髪は、窓の傍に置いてあったランプの光に似た綺麗なオレンジ色で風に流されさらにキラキラひかる…
 それはまるで人形の如くの可愛らしさだったが、愛らしいはずのガラスのように透き通った碧い瞳もまた、どこか人形の目のように冷たく悲しいものだった。
 『ライア』と呼ばれたコウモリのような生きものは、チーチーと話し掛けるように鳴き、その声に少女は耳を傾けた。
 「…え?バジル様が…?」
 どうやら少女にはライアの言葉がわかるらしく、驚いたように言葉をつまらせる…だが依然顔は無表情なまま。
 「まぁ…バジル様程の実力者が…それはそれは…相手は相当な実力者…厄介そうですわね?ありがとうライア、また引き続き調査お願いしてもよろしくて?」その声を聞き届けるとライアはぱっと飛び立ち、また真っ暗な暗闇のなかへと消えていった。
 「ふぅ…一刻も早く誰かに報告しなくては…」
 「パル、ライアはなんだって?」
 ぎぃ…と重々しいドアが開いて一人の少年が部屋に入ってくる…ちょうど『パル』と呼ばれた少女と同じぐらいの年に見える赤髪の少年、ただパルとは対照的に活発そうだった。
 「サク…」
 パルは少年の方ををむいてそういった、どうやら少年のほうは『サク』というらしい。
 「バジル様が……敵に負けたそうですの…。」
 「え!?バジル様が!?」
 不意に声が大きくなる、少年は目を丸くしてひどく驚いた。そしてしばらく考え込んでからパルに問いかける。
 「誰にやられたかはわかったのか?」

 「…ええ、どうやら例の能力者の『スクルファー』と、アクロお姉さまを取り返そうと企む仲間の一人…確か女性スナイパーで名前は『りあ』と言っていたそうですわ。」
 するとパルは深刻そうな顔をする…
 「それで、バジル様は…?まさか奴らに殺られたわけじゃないだろうな…!?」そんなことは絶対にないと自分にいいきかせるサク。
 「そんなに心配しなくとも…敵もさすがに聖職者だけあって、そこまで無慈悲では無かったようです…今は木に縛りつけられてるようですわ」
 それを聞いてサクはほっと胸を撫で下ろす。それと同時に縛り付けられたバジルを想像したのか少し吹き出していた。
 「サク…!笑っている場合ではありませんわ、相手が無事ということは、別に戦っている仲間に合流して戦力が上がってしまうということ…早く手を打たなければアクロお姉さまだって危ういのですよ!?…もちろんシオン様だって…!」
 真剣な表情でサクに訴えかけるパル、よっぽど心配にみえるが、シオンはとって付けたようないい方だった。本人はそのことに気付かず額に手をあて落ち着かない様子で左右を往復した。
 「…ということは、そろそろオレの出番ってとこだな?」サクは少し嬉しそうに自分の剣をみながらそういった。
 「サク一人じゃ無謀すぎですわ!バジル様でさえ負けたのですよ!?いくら合流するためバラバラになってるからっ…」そういいながらふと、パルはあることに気付く
 「そうよ…今標的は1人じゃない…!」
 「え!?そうなのか?なら尚更今が絶好のチャンスじゃん!」そういってサクはより一層嬉しそうに話す。剣を鞘から抜き、まじまじと眺めていた。
 「でも油断は禁物…サクは無鉄砲だし余計に心配だわ、こうなったら卑怯かも知れないけど、サクと私のタッグで最善を尽くしましょう…!」
 「ああ!オレとパルの無敗の双子の力みせつけてやろうぜ!」
 強くうなずき無邪気な笑みを浮かべるサク、剣をしまうと一目散に部屋をでようと走りだした。
 「サク!出発報告しなきゃ…!」あわててサクに言い聞かせるその声は普段より少しばかり大きくなった。
 「パルやっててくれよ、オレ武器や装備整えてくる」そう言い残して部屋をでてしまった。ふぅとため息を付き、しばらく考えてパルも支度をし始めた。

 「アクロお姉さま…どうかご無事で…!」
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by mar_cancion | 2006-06-04 00:22 | スクルファー